大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和31年(あ)1864号 判決 1957年2月21日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人三名の弁護人佐伯静治の上告趣意第一点中、威力業務妨害罪の解釈を誤ったとの点は、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(そして、原判決が、刑法二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」とは、一定の行為の必然的結果として、人の意思を制圧するような勢力を用いれば足り、必ずしも、それが直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要しない旨の法律見解の下に、「送炭を阻止するため、実力を以て貨車の開閉弁を開放して、同貨車に積載せる石炭をその場に落下せしめて会社の送炭業務を不能ならしめた行為は、同条所定の構成要件を充足するものとした」第一審判決の判断を相当としたことは、当裁判所においてもこれを正当として是認することができる。)

次に、同点中判例違反をいう点は、原判決の判断は、所論引用の判例と合致しこれと相反する判断を示していないから、採ることができない。(なお、原判決が「威力ヲ用ヒ」とは、一定の行為の必然的結果として人の意思を制圧するような勢力を「示せば」足り云々と判示したのは、かかる勢力を用いれば足り云々の趣旨であって、必らず示す方法によらなければならない趣旨でないことは、その判示全体就中「(事実)」の判示中に「以て威力を用いて会社の右出荷の施行を不能ならしめて、その業務を妨害したものである」との判示に照し明らかである。)

さらに、同点中違憲をいう点は、原判決に法令違反のあることを前提とするものであって、その前提の採ることのできないことは前述のとおりであるから、所論はその前提を欠き刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第二点は、違憲をいう点もあるが、その実質は、結局本件被告人等の所為は、労働組合法一条二項の正当な行為に該当するというに帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(そして、原判決の適法に認定した事実関係の下において、原判決が被告人等の本件行為は、労働組合法一条二項の適用によってその違法性が阻却されるものとは解されないとの判断は正当であって、所論の違法は認められない。)

よって、刑訴四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 入江俊郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例